実用化が進むIPの標準インタフェース「OCP」、ソニックス製インターコネクトとの組み合わせ利用は効果大〜日本TI、リコー、東芝、川崎マイクロの採用事例

IPの標準インタフェース規格として、IPのプラグランドプレイを実現する「OCP(Open Core Protocol」。SoC開発におけるその多大なメリットに加え、普及団体「OCP-IP」の積極的な活動やEDAベンダのサポートによって、日本国内でも実用化が進んできている。

さる5月末に新横浜で開催された「OCP Technology Forum 2007」では、OCP-IP及びOCPをサポートするIP/EDAベンダの講演と合わせて、OCPを実際にチップ設計に活用した事例が日本テキサスインスツルメンツ、リコー、東芝川崎マイクロエレクトロニクスの4社から発表された。

日本TIの発表は、同社におけるOCP利用ガイドラインに関する話と、携帯向けプロセッサ「OMAP」用のOCP2AHBブリッジ設計の紹介。同社ワイヤレス・ターミナルズ製品事業部では「OCP」をIP開発の標準プロトコルとして採用しており、独自にカスタム機能を追加するなどしてOCPを拡張利用している。そのため、カスタム機能の乱用防止や複数開発拠点における設計スタイルの統一を目的に、独自の「OCPデザイン・ガイドライン」を策定する事で設計の複雑さを制御しているという。ちなみに「OMAP」では早くからのOCP準拠のソニックス社製インターコネクトIPを採用している。

リコーの行った発表は、多機能プリンタ向けLSIにおけるOCPの適用例で、派生品から派生品へと展開される製品開発の過程で必ず発生する、「バス変更」という設計のネックを解消するために、ソニックスのインターコネクトとOCPを採用。後の派生品展開を効率化する再利用性の高い製品開発を実現した。また、設計に当たっては、OCP及びソニックスの提供するツールを利用することで従来よりも工数を大きく削減。例えば機能コアとインターコネクトの接続に関しては、従来の1〜2週間という工数を半日に短縮できたという。

東芝、川崎マイクロが発表した内容もやはりOCPとソニックスのインターコネクトを組み合わせた事例で、東芝は、Cellの性能を引き出すために使う「SCC(Super Companion Chip)」の開発でOCPとソニックスのインターコネクトを利用。OCPによってIPコアの再利用性を高めると同時に検証の容易化も実現。更に、ソニックスのインターコネクトによって、マルチ・バス・マスタにおけるQoSを実現した。

一方の川崎マイクロは、ASICベンダとして多様化する顧客ニーズに対応するために、MIPSコア/OCPベースの基本回路を埋め込んだテストチップを試作。同社もこのテストチップにソニックスのインターコネクトを採用しており、チップの性能を大きく左右し、設計ターゲットに依存して構成が変更されるバスをOCP準拠のインターコネクトIPに置き換える事で、設計・検証工数を削減すると同時に多様なニーズに対応可能なテストチップの実現を目指した。同社はこのテストチップをOCPを介してFPGAボードに接続し、顧客ロジックをFPGAに焼きこむ形で実機レベルのプロトタピングを実現する計画だが、RTL・評価ボードで対応できないケースについては、別途ESL環境を構築する事でカバー。具体的にはコーウェア社のESLツール「Platform Architect」を導入し、システムレベルで性能見積り・アーキテクチャ検討を行うためのSystemCモデルの準備を進めており、将来的にはVirtual Platformによるプロトタイピングを目指しているという。

以上、各社のOCP活用事例を通じて共通していたのは、OCPによってIP利用の効率化を図ると同時にソニックスのインターコネクトを組み合わせる事によって、デザイン自体の柔軟性を高め、その設計の効率化を実現しているという点。

フォーラム最後の東芝、TI、ノキアの3社による講演では、カスタマイズの自由度が高いOCP仕様の弊害(各社個別のOCP最適化)を指摘した上で、業界におけるより横断的なOCP利用に向けて「統一プロファイル」の利用が提言されたが、少なくとも現段階で各企業単位ではOCPによってIPの利用/再利用性は確実に高まっており、更なるOCPの共通利用は、システムハウス、EDAベンダ、IPベンダが共同して取り組むべき次の課題となっている。ちなみに、東芝、TI、ノキアの3社は、協同して策定した「統一プロファイル」を2007年度中に公開する予定で、時期OCP仕様(3.0)への取り込みを目指している。

OCP-IP日本語サイト
※「OCP Technology Forum 2007」共催企業
株式会社エッチ・ディー・ラボ 
コーウェア株式会社 
ソニックス 
ミップス・テクノロジーズ 
※記事提供:EDA Express